君と過ごす時間

2006年9月26日
いつの間にかそばにいてくれている人がいる。
背が高くて、泣き虫で、自分勝手な相方。
「付き合おう」といわれて傍にいるわけではない。
ただ、私が傷ついていたから。
私が泣いて、いたから。

彼と話したのは、今年の冬。
とても寒いバレンタインの夜。
出逢ったのは、もう少し前。
誕生日を少し過ぎた日。

ただそのときはおおきいひとだなとおもっただけ。

大きな手のひらがふいに私の髪に触れたのは、バレンタインイヴ。
とてもとても悲しくて。
彼を思い出して。
広い世界で一人ぼっちで泣いていました。
広い世界で一人だけ私を見つけてくれました。
その前から食事に誘われていたのだけど。
初めて、彼と、出逢ったのは。
寒い二月の半ばでした。

ふわふわとする暗闇に出ると
そこはとても高い階段で
あたしは暗闇の中で不意に彼を見失って
あたしの目は光を捉えられなくて
その場に立ち竦んでしまいました。
そこに手を差し伸べた恋人は言いました。

「大丈夫。僕の手をとって」

大きな手のひらがあたしの手を捕らえて。
暗闇の中、彼の大きな手のひらの温度だけが
光のようにあたたかくて。
大丈夫、と微笑みかえしました。

明け方の2時。
まだ暗い。

駅から40分。
ふらりふらりと二人で手をつないで歩いていました。
とても暗い、道を。
不意に彼が、キスをしました。
とても冷たい柔らかなくちびる。

あたしはそこに重ねたいと思いました。
ゆらゆらと
揺れる世界で。

タクシーを呼ぶことをようやく思いつき、
あたしたちは手を振りました。
あたしはその時過去に
手を
ふりました。

柔らかな手を重ねたまま
朝まで相方の車の中で空を見ていました。
そしていつの間にか眠ってしまった私をそっと抱きしめて
彼も眠りにつきました。

会社の駐車場。
見つかることなんて恐れてなかった。
ただそのぬくもりに抱かれて眠っていたいと思ったのです。
大きな腕の中で少しあたしは泣きました。

罪悪感。
背徳感。
心。
優しさ。
ぬくもり。
そして君。

本気で好き。
そんな気持ち、微塵もなかった。
深く関わるつもりもなくて。
ただ誰かに傍に居て欲しかった。
誰でもよかった訳じゃない。
でも、彼じゃなきゃダメだった訳でもない。

それは彼も同じ。

私が泣いていたから。
泣いているように見えたから。
僕が
僕がいないと
君は泣いてしまんでしょ?
僕も
君が今いなくなったら
多分、泣く。

随分最近頂いた言葉。

好き、とか。
自分の言葉を話さない、彼。
そんな彼は、よく涙を浮かべる。
傷つけたの?
そう言って、不安そうに見つめる。
そんな仕草に、いつの頃からか惹かれて。

肩を寄せ合って
車の中から外を見つめるのがすき。
音楽を小さく流しながら
ぼんやりと買って貰ったコーヒーを飲むのがすき。
あたしは、コーヒーが、嫌いだったのに。
暖かい心音を体中に満たして
あなたの腕の中でぼんやりとまどろむのがすき。

他愛ない話を明け方まで。
昨日、猫が家の前に居た話とか。
旅行先で見た景色がとてもきれいだった話とか。
旅行先は恋人の実家のある町。
とても海が美しい町。
夜がとても明るい町。
そんな町の話を、夜が明けるまで。
ベッドの中じゃなくて。
車の中で肩を寄せて、聞いてくれる。

「ずっと傍に居てあげるから」

悪戯っぽく笑って、そっと頬を寄せる。
王子様になりたいらしい。
それには少しルックスが足りないね、なんて、憎まれ口。

深い海。
暗い。
暗い海の底。
あたしはくるくると
くるくると泳いでいた。
閉じれない瞼を閉じてみたくて
ずっと涙を流し続けて
海は
塩分を
吸い取る

ただ
今は
傍に居てくれる人が居る。
恋人、だと彼が言うから。
彼氏じゃなくて恋人なのね、と笑う。
彼氏じゃなくて恋人なの。と彼は言う。

体より
心より
手を重ねて
夜を重ねて
あたしたちは息をしている。
気がつけばもうすぐ出逢った冬が来る。
毎日
毎日
あたしたちは同じ世界同じ場所で息をして
あたしたちは違う場所違う命を、生きて
気がつけば夜
人目を避けるように駐車場へ向かう

いつもの場所、で。

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